無茶苦茶強いばあちゃんだったらしく、衝撃でちょっと体が揺れた程度で持ち堪えた。
で、真後ろの私がカバンか何かをぶつけたと思ったのか、無言で振り返り睨みつけられた。
OLは特にばあちゃんに謝りもせず素知らぬ顔。
ばあちゃんが文句を言ってきたなら「私じゃなくてこの人が」と反論できたけど、
無言だったのでなんとなくそれもできず。その出来事はそれで終わった。

でも後から「運が良かっただけで、もしかしたら大変な目に遭ってたのでは？」と思い返した。
ばあちゃんの足腰が常人程度で、OLに押されたことで転んでたら…
前を歩く人を巻き込んで階段を転げ落ちてただろう。
その時、ばあちゃんの真後ろにいたのは私。
「誰かに押された」
とばあちゃんが言えば、真っ先に疑われるのは私。
あのOLは「私が転びそうになってほぶつかったんです」とか言わずに逃げる気がする。
自分は口下手だから「私じゃない」と言っても余計に疑われただろう。
当時はその階段付近に監視カメラもなかったし、通勤ラッシュで急いでる人が多かったから、
証言のために足を止めてくれる目撃者もいなかったかもしれない。

出来事自体は何もなく済んだのに、未だに半年に一回くらい、
ばあちゃんを突き落とした犯人として連行される夢や、
証拠不十分で釈放されるけど噂が広まって
「ババア突き落とし犯」として後ろ指を指される夢を見て目覚めることがある。