これだけの文章だったけれど、キスという単語でバーっと一気に記憶が蘇った
新卒の頃、先輩に歓迎会と称して食事に誘われた
てっきり他の同期も誘われていると思ったけど、そうじゃなかった
先輩だし同じ職場だし、変なことはされないだろうと不安を押し殺していたものの、
誘ってきたのに店を決めてきてないことが車内の会話でわかって、途端に不安がぶり返した
このままどこに連れて行かれるんだろう？
そもそも先輩とはいえ、よく知りもしない男性と二人きりなんだと改めて怖くなった
さらに「お金がないから下ろしにコンビニに寄ってもいい？」
「家に財布を取りに戻ろうかな」とも言い出して、疑念と恐怖心がピークに
「それなら今日のところは解散で」
「ご飯のこと伝えてなかったのでお母さんから怒りのLINEが来ちゃったので」
と、無我夢中で言い訳して機会を改めてもらうことに成功した
家まで送ると言われたけれど、家を知られたくなくて全く違う方向を指定して
適当なマンションの前で下ろしてもらい、タクシーを呼んで家まで帰った
それで車から降りる際、キスしないと帰さないと言われてロックをかけられてしまい、
仕方なしにキスをしたことを思い出した
あまりにも怖かったし、あんなのがファーストキスだなんて認めたくなくて
記憶に蓋をしていたんだと思う
先輩はあの一回で私と付き合ったつもりだったんだろうか
10年近く昔の出来事なのに、ずっと覚えていたんだろうか
あの出来事の後、不思議と再度誘われることもなく、表面上は和やかに接していたし、
私は私でなかったことにして振る舞っていたのに、ずっと本当は覚えていたんだ
どういう気持ちでこのLINEを送ってきたんだろう
すごく怖い

根回しは大事だよな